TKBとは、トイレ・キッチン・ベッドの略です。なぜ、避難所でTKBが重要で、これらがしっかり整っていないと命を落とすことにつながります。
新聞報道で先月、石川県能登町と穴水町、珠洲市では、男女計18人を能登半島地震の災害関連死と新たに認定したと発表したとありました。死者は計299人、そして関連死は70人。平成の30年間には、5000人もの災害関連死が出たといわれていれています。
この問題を解決するために避難所環境の改善に尽力する一般社団法人「避難所・避難生活学会」が、大阪府八尾市内の小学校体育館で、酷暑期の避難所生活を想定した1泊の演習を実施した模様をリポートする記事が聖教新聞掲載にされていました。(以下 8月4日付記事から要旨)
今回の演習を企画したのが、避難所・避難生活学会の常任理事を務める水谷嘉浩さん。八尾市内の段ボールメーカーの社長を務め、もともと防災活動とは無縁。その人生を一変させたのが東日本大震災。あの日、水谷さんは出張先の東京で被災。大阪に戻れず、東京で一夜を明かした。テレビに流れる壊滅的な状況に心を痛め、大阪に戻ると、支援物資でパンパンになった4トントラックを被災地に走らせた。後日、避難所に身を寄せている方が低体温症で亡くなったというニュースを見た。「避難所って安全な場所だと思っていたので全く理解できなかった」と振り返る。
すぐに断熱効果のある段ボールの活用を思い付き、試作を重ねた段ボールベッドをSNSに発信した。避難所学会の代表理事である植田信策さん(石巻赤十字病院副院長)は当時、宮城県石巻市内の避難所を飛び回り、雑魚寝は低体温症だけでなく、エコノミークラス症候群などのリスクを高めると見抜いていた。
人が寝るのに耐えられるだけの強度があり、短時間に大量生産できることなどから、水谷さんの段ボールベッドに目を付けた。すぐに植田さんと水谷さんは約50の避難所を歩き、一カ所ずつ段ボールベッドの導入を提案していった。しかし、導入事例のないことなどから、ほとんどが門前払いだったという。
水谷さんは震災後、各市町村に段ボールベッドの有用性を説明しながら、個別に防災協定を結ぶ活動をスタート。全国段ボール工業組合連合会も巻き込み、協定を結ぶ地方公共団体や自治体は増えていった。イタリアの避難所運営の取り組みが進んでいると知れば、同志と共に何度も視察に通った。こうした活動が避難所学会の設立につながっていった。
避難所学会は「TKB48」を提唱する。これは、①清潔で安全なトイレ(T)、②普段通りの適温でおいしい料理(K)、③快適で熟睡できる就寝環境(B)を発災から48時間までに避難所に届けるというもの。
水谷さんは熊本地震、西日本豪雨や能登半島地震などの避難所を手弁当で回り、段ボールベッドを設置して雑魚寝を解消してきた。植田さんをはじめ避難所学会のメンバーも、TKBに基づいた支援を被災地で推進。こうした取り組みに背中を押されるように、国の「防災基本計画」などにもTKBに沿った修正が行われるようになった。しかし、そこに法的拘束力はなく、避難所運営は市町村ごとの対応に委ねられている。予算の関係や運営のオペレーションなどの課題が山積し、TKBに基づいた環境改善には、まだいくつものハードルがあるのが現状だ。水谷さんは「避難所環境の改善を国民の関心事にしたい。今回の演習はそのスタート」と力を込める。 シャワーの給水は、能登半島地震の被災地で使用されている株式会社クリタックの浄化装置を使用して貯水槽の水をろ過。水圧も問題なく快適だった。(記事より要旨)
避難所・避難生活学会は、「快適で十分な数のトイレ」「温かい食事」「簡易ベッド」が必要であることを提言として発表しています。今後、災害関連死を防ぐTKBの視点での避難所、在宅避難体制についてしっかと検討していく必要があります。