“ゆるやかなつがり“を紡ぐリンクワーカーについて…
今、求められているのは、“ゆるやかなつながり”を紡ぐ「つなぎ手」の存在だと思います。この点で注目されるのがイギリスの「リンクワーカー」という概念です。これは医療だけでは支えきれない心の不調を抱える人を、地域のコミュニティーやサポートにつなぐ“社会的処方”――例えば、「薬の代わりに人とのつながりを処方する」ような存在です。じっくりと話を聴き、その人に寄り添いながら、一緒に選択肢を探る。必要に応じて同行し、支援や制度への橋渡しを行う。特に日本では、困難な状況にある人ほど、支援や制度の情報が届きにくく、「どこに行けばいいのか分からない」ケースが多く見受けられます。だからこそ、支援や制度との間に立ち、手を差し伸べる「寄り添い型支援」が、これからの社会で一層重要になっていくと私は考えています。これは、先日の宮本みち子先生へのインタビュー記事の中のお話しです。(危機の時代を生きる/聖教新聞)
「社会的処方」という言葉は、政府の「経済財政運営と改革の基本方針」(「骨太方針」)でも使用されているようです。孤独・孤立対策推進法も成立し、今後ますます医療や介護の場、さらに市民活動の現場においても耳にする機会は増え、注目されているとの事です。(参照:NsPace(ナースペース)は訪問看護専門の情報サイト)
社会的処方の発祥はイギリス。1980年代から自主的な活動としてスタート、2006年にはイギリス保健省もその活動を紹介。国全体に関心が広がっていったとの事。社会的処方が外来診察・入院等を減らしたという調査報告もあり、2018年には補助金も準備され、孤独対応の政策のひとつとなった様です。
その結果、イギリス国内では社会的処方のネットワークが構築されており、GP(一般医・家庭医)が必要だと判断したら、専門の研修を受けた「リンクワーカー」と呼ばれる職種につなぎます。そしてリンクワーカーが、患者や相談者を地域の人やコミュニティにつながる役割を担っているのです。
近年、少子高齢化、核家族化や晩婚化、インターネットの普及など、さまざまな原因で人と人とのつながりが希薄になっています。家族や地域のコミュニティとの接触がない「社会的孤立」状態の人は増えており、社会問題になっています。「地域包括ケアシステム」「地域共生社会」の達成を目指す日本政府は、健康づくりや疾病の重症化予防に効果がみられるイギリスの社会的処方に注目。そして、新型コロナウイルス感染症の蔓延をきっかけに、2021年には内閣官房に「孤独・孤立担当大臣」および「孤独・孤立対策担当室」が設置され、いくつかの都道府県において社会的処方のモデル事業を開始。政策の一環として社会的処方の運用が始まりました。2023年6月には「孤独・孤立対策推進法」が成立しています。(参:NsPace(ナースペース))
今、求められているのは、“ゆるやかなつながり”を紡ぐ「つなぎ手」の存在。とても大切な存在だと思います。