北海道大学における自治体連携の取り組み

横浜市会政策経営・総務・財政委員会の行政視察にて北海道大学を訪問しました。

北海道大学は、大学院に重点を置く基幹総合大学であり、その起源は、1876年に設立された札幌農学校です。札幌農学校の開校式にあたってクラーク博士が唱えた“lofty ambition”(高邁なる大志)という言辞を端緒として、世紀を超えて北海道大学を揺るぎなく支えてきた基本理念との事。

訪れた会場は、社会課題や地域課題の解決に向けた新たなアイデアを生み出す 「場」として、昨年開所したオープンイノベーションハブ「エンレイソウ」。「エンレイソウ」の施設は、様々な協業の「場」として、1階はモダンデザインの家具を配置し居心地の良いフリーデスクのコワーキングスペースと、プレゼンテーションラウンジ、2階は3室の貸会議室となります。コワーキングスペースは、用途に合わせレイアウトを変更でき、最大100名規模のイベントが可能。企業・自治体等と研究者の打合せのほか、学生グループによる社会課題等の解決に向けた企画や活動、教員・学生向けの起業体験プログラム、ピッチコンテスト等による利用をされます。

昨年創設された広報社会連携本部の中村健吾特任准教授のお話を興味深くお聴きする場ともなりました。自治体との人材交流・人材育成(LRA(Local Research Administrator)認定制度)、産学官金連携の場(コモンズ)の形成等をを目指されています。

北海道の風土や地理的特性を基盤とし,社会・産業とともに発展してきたものが少なくない。様々な課題が山積する現代において,北海道学は果たすべき社会的役割の重要性を深く認識。「世界の課題解決に貢献する北海道大学へ」と掲げ,世界トップレベルの研究推進や国際社会の発展に寄与する人材育成とともに,「学外との連携・協働による知の発信と社会変革の提言による社会の課題解決や活性化,新たな価値創造への貢献」を標榜しているとの事。社会連携に関する基本方針として(以下)
1.自治体や団体等との組織的連携
自治体や団体,企業等と連携し,本学及びそれぞれが有する成果や資源を活用することにより,社会の発展に貢献する。
2.社会における課題解決への貢献
社会が抱える課題に対して,主として各々の大学構成員がそれぞれの有する知見等に基づき,審議会・委員会等活動への参加や政策提言などを行うことにより,社会の発展を推進する。
3.生涯学習機能の強化
社会構造の変化を踏まえ,社会における文化的素養や知的探究心の向上,これによる豊かな人生の実現などに寄与するため,生涯学習機能を強化し,社会の発展に貢献する。
4.資産を活用した地域活性化等への寄与
自然豊かなキャンパスや歴史的建造物等の資産を有効に活用し,社会と連携した取り組みを推進することにより,地域をはじめとする社会の活性化に寄与する。

大学発のイノベーションが、社会変革の牽引力となることは、欧米における数々の成功例がこれを実証してきました。今、この瞬間も、大学発のイノベーションは、現在進行形で世界を席巻しています。これに対して、日本の大学においては、優れた研究があるにもかかわらず、これを社会実装させるメカニズムが不十分。あるいは、基本的に、イノベーションを生み出すための大学の構造改革が欠けていたかもしれない。

大学自身のイノベーションは、科学技術における教育・研究の卓越性 "Excellence"と、教育・研究を社会に広げ地域課題を解決する社会展開力 "Extension"の2つの要素からなる。日本の大学は、かつてExcellenceにおいて欧米と肩を並べていましたが、Extensionのメカニズムが脆弱でした。その結果、ExcellenceとExtensionの2つのエンジンから人材と収益という果実を生み出し、その果実が次のExcellenceとExtensionを生み出すという好循環・エコシステムの醸成が、日本においては遅れました。

北海道大学を含めて日本の総合大学が欧米の大学の後塵を拝することになった一因。今、日本の成長戦略の中で、「科学技術・イノベーション」が重要な成長エンジンと位置づけられています。大学と社会との協働によるイノベーションの創出、言い換えれば、ExcellenceとExtensionの統合を社会は強く求めています。(総長メッセージ)

現在HU VISION 2030を掲げ、"Excellence"と"Extension"を明確に可視化し、その統合による好循環・エコシステム創成への北海道大学の中期的ビジョンを示して取り組まれています。

 

URL :
TRACKBACK URL :

コメント

  • 最近の投稿
  • 人気の記事
  • Category
  • アーカイブ