「成熟社会の豊かさ」「コミュニティー空間」としての商店街

商店街に新たな動きが見え始め、若い世代がカフェやコワーキングスペースなどコミニュティーの拠点として商店街に関心を向ける。クルマで買い物に行くのが困難な高齢世代が商店街に足を向けるという流れもでてきた。こうしたコミニュティー空間としての「ウォーカブル・シティー」を求める動きも各地で起こりつつあるという。

商店街のもつ新たな意味や価値に注目し、国際比較の視点や、まちづくり、交通など公共政策の観点も盛り込み、幅広い叡智を結集。未来の商店街のありようと、再生に向けた具体策を定義。商店街は過去の遺物ではないとした「商店街の復権」ー歩いて楽しめるコミニュティー空間ーと題した広井良典氏の著書(ちくま新書)を手にしました。様々な示唆に富んでいると思いましたので紹介します。(以下 参照)

現在、人口20万人程度以下の地方都市の中心部はほとんど間違いなく“シャッター通り”。30万から50万に人規模の都市でも中心部が空洞化していることが広く見られるといいます。東京近辺のような大都市圏においても、一部の地域ではそうした状況が生じています。私の事務所の所在する神奈川区の「おおぐち通り商店街」は、かつては、終戦翌年の1946年(昭和21年)の2月には市内で最も早く復興したとして、昭和天皇による全国最初の巡幸地に選ばれた歴史ある商店街です。

完全に「道路と自動車」中心に作られれてきたアメリカ的な都市・地域モデルをに日本も国を挙げて模倣していったのが昭和・平成の姿。現在は、狭い意味での商店街や中心市街地を巡る話題に留まらず、日本における都市やコミュニティーのありよう、人口減少時代における地域再生ないし地域経済の活性化、環境・福祉・経済のバランスのとれた「持続可能な福祉社会」の構想といったテーマに繋げていくことが大切に感じます。

著書の中では、アメリカの都市と比べて対照的なこととして、ヨーロッパにおいては、地方の中小都市においても「商店街」が地域にしっかり根付いた形で存続し、活気ある賑わいを示していて、子どもから高齢者まで、様々な世代がゆっくりとくつろいで過ごせる「コミュニティー空間」となっていると紹介されています。政策的に都市部の中心部から自動車がほとんどシャットアウトされ、歩行者が「歩いて楽しめる場所」になっている。そしてそれが野菜などを売る市場やカフェ、パン屋、お洒落な雑貨店、レストラン等などと一体となって、魅力ある都市空間を形成しているとの事。「成熟社会の豊かさ」として、居心地の良い「ゆったりと流れる時間」、人と人の緩やかなつながりや交流、そして「コミュニティ感覚」と呼びうるものに示されていると感じられると紹介されています。

中心市街地空洞化やシャッター通り化の要因として大きく3つに要約すると、①政策サイドの要因/道路・自動車中心の都市・地域モデル②供給サイドの要因/商店の後継者問題・家族を超えた事業承継の困難⓷需要サイドの要因/消費者にとっての魅力(空間・個店)

「エリアイノベーション」の視点では、地域全体を視野に収めながら推進する事が求められ、個々の土地や事業継承に関するコーディネートを、地域全体でデザインするような面的な視点が必要。しかし、日本では「家族主義」「土地所有の絶対性」という発想が根強いため、土地をめぐる、家族を超えたバトンタッチがなされにくく、親の事業を子どもが引き継がないと、家族以外の承継がなされず、そのまま放置されることが生じやすいという点の視的もされています。

日本の場合、高度成長期そして90年代以降の時代において、完全に道路・自動車中心そして「郊外ショッピングモール型」の都市・地域像を国を挙げて推進してきた結果が、現在の地方都市の空洞化の大きな背景となっている。そうした都市・地域の姿が、高齢化の急速な進展や若い世代のローカル志向の中で、根本的な転換期を迎えているのが現在であり、商店街ないし中心市街地を「歩いて楽しめるコミュニティー空間」として再編していくことが、環境、福祉そして経済にとってもプラスに働くと指摘されています。様々な示唆にとんでおり考えさせらる思いでした。

 

 

 

 

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