●福祉避難所について/福祉避難所は、地域防災拠点での避難生活が難しいと判断された方を受け入れるための二次的な避難所であり、特別養護老人ホームや地域ケアプラザなどの社会福祉施設等に開設されることになっている。平時の取組では、施設がバリアフリー化されているなど要援護者の利用に適している社会福祉施設等を福祉避難所として区と協定を締結している。また、避難生活に必要な食料、水、生活用品等の施設への備蓄を行っている。発災時の取組では、区災害対策本部の保健活動グループが巡回等により、要援護者の健康状況、生活状況及び環境衛生等を把握し、福祉避難所への避難の必要性の判断を行う。その後、区が福祉避難所へ開設を要請 し 、要 援 護 者 の 受 入 れ を 決 定 す る 流 れ に な っ て い る 。発 災 時 に 備 え て 、福祉避難所の開設等、訓練を実施している施設もある。
● 医療的配慮を要する市民への対応 /災害時に医療的配慮を要する市民への対応の一つとして、透析患者への対応を行っている。透析患者は継続して週3回程度の透析を受ける必要があり、かかりつけの透析医療機関が被災した場合、市内の災害拠点病院を中心とした 11ブロックに分けた透析医療機関が連携して透析患者を受け入れる体制をとっている。被害が市内の広範囲に及ぶ場合は、被災地外への搬送の調整も行うとしている。その他、在宅酸素療養者及びIVH中心静脈栄養への対応として、在宅酸素療養者の酸素ボンベや中心静脈から投与するIVHが不足する場合は、協定を締結している事業者に供給を要請するとしている。
●乳幼児、妊産婦への対応/a 対象者数と特性として、令 和 3 年 度 の 妊 娠 届 出 者 数 は 2 万 6 1 4 2人 、0 歳 か ら 6 歳 ま で の 人 口 は 、令和5年1月1日現在で 18万 2637人となっている。乳幼児は自力で災害情報の把握や避難が難しく、全面的に家族や大人の支援が必要不可欠である。また、急激な環境の変化で思わぬ事態が起きる場合も考慮する必要がある。妊産婦は災害時に避難行動が遅くなる傾向があり、身体に配慮した適切な誘導等が必要不可欠である。また、妊 婦 は 分 娩 の た め の 場 所 、新 生 児 に は 衛 生 的 な 場 所 の 確 保 も 必 要 と な る 。
b 取組内容として、平時では自助を促す取組として、こんにちは赤ちゃん訪問の際に、配付している冊子の中で、いざというときの災害の備えについて周知を行っている。複数の区において、子育て家庭向け防災ハンドブックや防災啓発グッズの作成をしている。母親教室などの機会に配付し、備蓄品や家の中の安全対策、避難先の確認などの周知・啓発を行っている。さらに広報よこはま市版・区版、防災の教科書、防災よこはま、地域の防災訓練等を活用し、在宅避難についてや家庭・心身の状況に合わせて備蓄することを啓発している。共助を促す取組では、地域防災拠点での、妊産婦が休息できるスペースや授乳スペースの確保、乳幼児のプレイルームの確保などの配慮が必要なため、地域防災拠点開設運営マニュアルに、妊産婦や乳幼児への配慮事項を記載している。医療面での取組では、医学的見地から助言・調整を行う災害医療アドバイザーを医師に委嘱している。災害医療アドバイザーは発災時に、市災害対策本部の医療調整チーム員として対応をする。
また、県は、小児周産期医療に関する傷病者の受入れや人的支援等の医療調整を行う災害時小児周産期リエゾンを医師に委嘱している。発災時 に は 市 か ら 県 に 職 員 を 派 遣 し 、災 害 医 療 ア ド バ イ ザ ー と 連 携 し な が ら 、市外搬送などの調整を行う体制となっている。発災後の取組としては、備蓄している粉ミルクや紙おむつなどの地域防災拠点での備蓄品の提供を行うとしている。さらに地域防災拠点、在宅への巡回健康相談等の活動として、区災害対策本部、医療調整班保健活動グループが巡回等により被災者の保健活動を実施する中で、要援護者の健康状況、生活状況、環境衛生等を把握し、要援護者が必要とする支援を行うこととなっている。その他にも、出産取扱施設の確保として、市災害対策本部医療調整チームが、分娩予定者や切迫早産、急な診察に対して市内の出産取扱施設をはじめ、県保健医療調整本部と連携して被災地外出産取扱施設の確保に取り組むとしている。
外国人への対応として/a 対象者数と特性として、現在、市内には約 11万人の外国人が在住しており、今後も増加が見込まれている。また令和4年の市内外国人延べ宿泊者数は約 14万人となっている。
特性としては、短期滞在者だけでなく、日本語で日常会話ができる外国人でも避難や支援物資など災害時特有の言葉が分からない可能性があること、防災に関する知識が不十分なケースが多いこと、文化の違い、地震に関する経験や教育がない場合には心理的負担が一層大きくなることなどが挙げられる。
b 取組内容としては、平時の取組では、在住外国人向けの普及啓発を行っている。多言語リーフレットで防災への備えを案内するほか、外国人が参加しやすい防災訓練の工夫や災害を模擬体験できる機会などを提供している。また、国際交流ラウンジでは、外国人と日本人が一緒に市民防災センターを見学した後、防災について考えるワークショップなどを実施している。一部の区では、防災マップの多言語化や外国人向けの防災講話に取り組んでいる。外国人旅行者向けの普及啓発としては、 Safety tipsや YOKOHAMATRAVEL GUIDEの普及、横浜観光情報公式サイトでの情報提供、防災ガイドブックの配布などを通じて、旅行中の災害等に遭遇した際の安全確保等の知識を普及している。その他の取組として、地域防災拠点開設運営マニュアルに外国人への配慮事項を記載し、地域防災拠点のコミュニケーションボードの配備、機械翻訳等により市ホームページで発信する情報の多言語化、ウェブの震災ハザードマップの多言語対応を行っている。発災後の取組では、災害時広報として、マスメディアを通じて外国語放送による地震情報、安否情報、被災情報等を提供、災害時通訳翻訳ボランティアの協力により広報を実施、公益財団法人横浜市国際交流協会の災害情報ウェブサイトで多言語での情報を発信、横浜観光情報公式サイトやSNS、観光案内所、横浜駅のデジタルサイネージ等において外国人旅行者に対する情報提供を行うとしている。また、津波避難情報板に多言語表記を行うか、津波警報発令時には防災スピーカーで多言語による避難の呼びかけも実施するとしている。
横浜市外国人災害時情報センターの設置については、市災害対策本部が設置された場合、市は公益財団法人横浜市国際交流協会に対してセンターの設置運営を要請し、センターでは、外国人への相談対応の実施、災害情報ウェブサイト等での多言語での情報発信、避難所等への災害時通訳、翻訳ボランティアの派遣、災害発生に関する情報の翻訳を行うこととなっている。