災害時における「スフィア基準」

災害の規模が大きければ大きい程、声の小さい人々は支援や復興から取り残されると言われます。日常での生活弱者を視野に入れた震災支援策が必要になります。障害者や性的少数者・外国籍住民、経済的弱者・女性の視点等、それぞれの困難に見合った「多様な支援」こそが必要です。

男女分業が根強い日本社会では、女性が生活分野を担ってきました。その発言力の弱さは、生活に根ざした支援や復興策の取りこぼしやの原因にもなっていると言われます。高齢者や子どものケアを担うことの多い女性の要求が政策に反映されにくい現状があり、被災者の生きづらさも招いています。(参:岩波ブックレット 災害支援に女性の視点を)

横浜市も“子育てしたいまち”を市政運営に掲げます。乳幼児を抱える家族や妊産婦は、東日本大震災の折、避難所生活に耐えられず早い段階で避難所出て、車中生活や半壊の家にいたとの例も多くあったと言われます。現在災害における国際基準に、緊急救援や災害復興の支援現場で支援者が守るべき最低基準を定めた「スフィア・プロジェクト:人道憲章と人道対応に関する最低基準」や第二回国連防災世界会議で採択された「兵庫行動枠組:災害に強い国・コミュニティの構築」等があります。

「スフィア基準」とは、国際赤新月運動のスフィア・プロジェクトで作成された災害や紛争後の救援活動において満たされる最低基準です。どのような活動にも共通する基準と「給水・衛星・衛星促進」「食料確保・栄養・雇用・収入機会」「シェルター・居留地・食品以外の物品」「保健」等から構成されています。ジェンダー・多様性への配慮は、スフィア基準の中で、どんな人道支援活動にも必要な分野で、横断的課題として位置づけられています。性のあり方、年齢、障害の有無、健康状態、家族の形、国籍、言語など多様性をもった存在です。

災害時には、最も支援を必要とする人々、最も弱い立場にある人々に支援が届きにくいと言われます。日常から地域の中で声を上げにくい弱い立場いある人々、差別を受けている人々へも支援が行き届いているのか、災害時の混乱の中で把握されないまま支援が行われていることもあります。「スフィア基準」では、災害の影響を特に受けやすい人々を「脆弱な人々」とういう言葉で表します。

「スフィア基準」には、尊厳ある生活を権利があり、援助を受ける権利がある。実行可能なあらゆる手段を尽くして、災害や紛争の被災者の苦痛を軽減すべきとあります。尊厳ある生活とは、自分らしくあるための心のよりどころやを大切にしてた価値観を維持できる生活と言えます。

日本は自然災害の多い国です。横浜市の地域防災計画では、「防災器材を活用した救助・救出など地域住民の相互協力による防災活動の促進、安全かつ秩序のある避難生活の維持などを目的として、地域防災拠点ごとに、地域・学校・行政などからなる地域防災拠点運営委員会が設置」されています。「運営委員会の設置・運営にあたっては、女性を委員に積極的に参画させるほか、災害時における男女のニーズの違いに配慮した研修・防災訓練の実施、女性の防災リーダー育成等の努めなければなりません」とあります。

災害時においても女性の相談支援や暴力防止対策の取り組みを継続し、女性や子どもの視点に立った避難所や在宅避難者のモニタリングと対策の改善、保健所や医療機関とも連携した女性・妊産婦・母子の支援、復興期における様々な課題に対する支援などに、直接的にも間接的にも従事できるよう、防災計画にも確実に位置付けていくことが大切です。(参:岩波ブックレット 災害支援に女性の視点を)

 

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