「中小企業等の賃上げ応援トータルプラン」

物価高を克服し、成長型経済への転換を成し遂げるためには、現在の賃上げの勢いを持続的なものとし、家計が実感できるような所得の向上、すなわち「構造的な賃上げ」が可能となるような構造へ作り替えていく必要があります。企業数で日本全体の9割超、従業員数で7割弱を占める中小企業です。中小企業の方々からは「コロナ禍で経営が停滞しており、資金繰りも大変で、賃上げしたくても思うように賃上げできない」との声を頂いております。この構造的な賃上げ実現には、中小企業が賃上げの原資を獲得するための、価格転嫁しやすい環境づくりや資金繰り、生産性向上のための地道かつ継続的な支援が欠かせません。

この件について、どの様に考えているのかお尋ねのありましたので、公明党中小企業活性化対策本部などが先月、官房長官に申し入れた「中小企業等の賃上げ応援トータルプラン」を提出。要旨をご紹介します。(以下)

物価高を克服し、成長型経済への転換を成し遂げるためには、賃上げの勢いを持続的なものとし、家計が実感できる所得向上を実現しなければならない。この「構造的な賃上げ」を実現するには、それが可能となる構造に作り変えていくことが必要となる。それには中小企業が価格転嫁しやすい環境づくりや資金繰り、生産性向上のための地道かつ継続的な支援が欠かせません。そこで公明党は、公定価格で運営されている医療・介護・障害福祉・保育等で働く方々も含め、厳しい経営環境下で賃上げの原資や労働力の確保に苦労されている中小・小規模事業者の賃上げに向けた取り組みを強力に支援するための施策を「中小企業等の賃上げ応援トータルプラン」として取りまとめました。

I、適正な価格転嫁・取引環境の改善

1、価格転嫁の実施状況調査の実施、毎年公表の推進

毎年9月と3月に実施する「価格交渉促進月間」の周知徹底を図り、中小企業等の交渉を政府がバックアップするとともに、中小企業庁のアンケート及びフォローアップ調査を強化し、取引実態を把握、発注側大企業の交渉・転嫁の実施状況を毎年公表すること。あわせて、状況の芳しくない親事業者に対する指導・助言を行うこと。

また、公正取引委員会においても、できるだけ毎年、社名公表ができるよう努めること。

2、労務費の適切な価格転嫁のための指針の作成、公表・徹底

業界ごとの労務費に係る実態を調査・把握するとともに、値上げ要請のタイミングや考え方、労務費転嫁に係る定期的な協議の場の設置、受注者側の根拠資料、発注側の対応など、労務費の転嫁の在り方について「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」として策定し、公表・徹底すること。

3、「優越Gメン」の増員

「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を着実に実行するため、優越Gメンの増員を図ること。

4、独占禁止法・下請法の厳正な執行

法違反等が多く認められる27業種※については、関係省庁が連携し、取引適正化のための取組強化の実態把握を行うとともに、事業者や事業者団体における自主的な取組を改善・強化するよう促進すること。あわせて、独占禁止法や下請法に違反する事案については、命令や勧告など事案に応じた法的措置に基づき厳正に対処すること。

※総合工事業、化学工業、鉄鋼業、非鉄金属製造業、金属製品製造業、はん用機械器具製造業、生産用機械器具製造業、業務用機械器具製造業、電子部品・デバイス・電子回路製造業、電気機械器具製造業、情報通信機械器具製造業、輸送用機械器具製造業、放送業、情報サービス業、映像・音声・文字情報制作業、道路貨物運送業、各種商品卸売業、飲食料品卸売業、建築材料〓鉱物・金属材料等卸売業、機械器具卸売業、飲食料品小売業、機械器具小売業、不動産取引業、不動産賃貸業・管理業、広告業、技術サービス業、協同組合

5、国や地方自治体等の官公需における適正な転嫁の確保

国や地方自治体等が発注する公共工事について、設計労務単価の引き上げを行うとともに、資材・エネルギー価格の実勢価格を適切に反映すること。また、物品調達やサービスにおいても、労務費、原材料費やエネルギーコスト等の実勢価格を適切に反映するとともに、年度途中で最低賃金の変更等が生じた場合には契約金額の変更に適切に対応すること。その際、下請事業者との契約にも適切に反映すること。また、そうした事態に柔軟に対応できるよう十分な予算の確保に努めること。

6、製品やサービスの最低価格を取り決める「団体協約」の積極的な活用促進

組合員と取引関係にある事業者と中小企業組合が団体協約を結ぶことによって、納入する製品やサービスの最低価格や、納品に係る支払条件(支払期日、支払方法など)の最低条件等の取引条件を独占禁止法の適用対象外として取り決めることができる「団体協約」(中小企業等協同組合法)について、活用のための指針を作るなど、その周知・活用を積極的に促すこと。

7、医療・介護・障害福祉分野における賃上げ

医療・介護・障害福祉分野において、令和6年度報酬改定も視野に入れつつ、食材料費・光熱水費高騰への対応や、賃上げのために必要な対応をできるだけ早期に実施するとともに、処遇改善に関する各種加算等の申請手続きの簡素化を図ること。

8、保育士の処遇の大幅な改善

保育士の処遇を大幅に改善し、現場の深刻な人手不足を解消するため、保育士の賃金引上げに向けた必要な措置を講ずるとともに、給与の公定価格の大幅な引き上げを検討すること。

9、建設業の賃上げに向けた「標準労務費」の提示等(法改正含む)

建設業の賃上げに向け、価格変動に伴う請負代金の変更条項を契約書上明確化することや、標準労務費の勧告、受注者による不当に低い請負代金や著しく短い工期の禁止等について、建設業法等の改正も含め、講ずること。

10、トラック運送業の賃上げに向けた「標準的な運賃」の見直し等(法改正含む)

物流の担い手の賃金水準向上に向け、「トラックGメン」による荷主等への監視体制強化や、「標準的な運賃」及び「標準運送約款」の見直しを行うとともに、荷主・元請事業者等に対する規制的措置等の導入について法改正を行うこと。

11、金型代金や保管料の支払いの適正化

日本金型工業会の「金型取引ガイドライン」なども活用しつつ、金型の代金・保管料の支払い、金型作成料の前払いも含めた適正化を行うなど、下請取引適正化に向けた施策を強化すること。

12、フリーランスの所得向上に繋がる取引適正化や相談体制の強化

フリーランス新法の施行に向けた周知・広報の取組みを着実に進めること。また、フリーランスの所得向上と安心して働ける環境整備を進めるため、公正取引委員会の執行体制の強化を含めた価格転嫁など取引の適正化や相談体制を強化すること。

Ⅱ、賃上げの原資確保に向けた生産性向上への支援

13、事業再構築や生産性向上への支援

「事業再構築補助金」、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」等の生産性革命推進事業による支援を実施すること。その際、申請書(計画)を作成する主体である事業者をサポートするため、商工団体等の支援体制を強化するとともに、賃上げを行う企業に対する補助額の上乗せ等について引き続き複数年度にわたって切れ目なく支援すること。

14、人手不足解消に向けた省人化・省力化への投資支援

中小企業等が直面する構造的人手不足への対応のため、省人化・省力化に必要な設備・機器等の投資を行うための支援を実施すること。その際、小規模事業者でも利用しやすい制度となるよう、カタログから選ぶように簡易で即効性がある仕組みとすること。

15、地方における賃上げを可能とする中堅・中小企業の拠点新設等支援

地域における良質な雇用を支える中堅・中小企業が、人手不足環境下でも成長機会を逃さず、賃金を引き上げながら持続的に事業を拡大できるよう、工場等の新設や大規模な設備投資を支援すること。

16、最低賃金引き上げへの対応を支援する「業務改善助成金」等の充実

業務改善助成金やキャリアアップ助成金による支援の充実を図ること。

Ⅲ、資金繰り支援の強化

17、賃上げに取り組む中小企業に対する金融支援の強化

日本政策金融公庫等の政策金融において、賃上げに取り組む中小企業に対する金利の低減措置を導入すること。さらに資本性劣後ローンの運用見直し等により資金繰りを支援すること。

18、経営者保証に依存しない融資慣行の確立

経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向け、「経営者保障改革プログラム」の実行を推進すること。また、保証料上乗せにより経営者保証の提供を選択できる信用保証制度を創設するとともに、保証料負担軽減策を講じること。さらに、事業者の知的財産や無形資産を含む事業全体に対する担保制度を早期に創設すること。

19、約束手形の現金化までの期間短縮の推進

2024年までに支払いサイトが60日を超える手形を指導の対象とすることを前提とした下請法の運用見直しを進めること。

20、「賃上げ促進税制」の長期延長、赤字でも賃上げを行う中小企業等を対象とした繰越控除制度の創設等の拡充

今年度末で期限が到来する「賃上げ促進税制」について、企業の持続的・計画的な賃上げを促す観点から、長期にわたって延長すること。その上で、赤字等の厳しい業況下においても賃上げに取り組む企業を対象とできるよう、控除しきれなかった金額を翌年度以降にも繰越しを認める措置を創設すること。さらに、地域の雇用を支える中堅企業や、仕事と子育ての両立に積極的な企業に対する上乗せ措置も検討すること。

最後に、以上の中小企業等の持続的な賃上げに向けた施策を推進・フォローする司令塔となる組織や関係省庁が連携する会議体の設置を検討すること。

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