「横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョンについて」議決に先立ち、公明党を代表して行田政調会長が質疑に立ちました。
財政ビジョンは、議決対象の本編のほか、データ・アクション編と合わせて全体で100ページを超えるボリュームがあり、その内容も、中長期の財政方針として普遍性・抽象度の高い内容から、足元の課題に対応するためのアクションまで、網羅されたものとなっています。これが実行できるのか、どう実行していくのか、ということが本日の質問の主題ですが、少なくとも、策定に当たった市長、そして市職員が横浜市の将来を憂(うれ)う真摯な想いというものは伝わってくるように感じます。そこで、改めて、(1)なぜ財政ビジョンが必要と考えているのか、市長に伺う。
《市長答弁》『現在、臨時財源の活用により行政サービスの水準を維持していることや、今後、人口減少と高齢化の進展等により更に収支不足が拡大していくことは、本市の財政状況が持続性に欠けた状態にあることを示しています。子どもたちや将来の市民の皆様に対して横浜の豊かな未来をつないでいくために、今、行動を始める必要があります。そのための道標として、中長期の財政方針である財政ビジョンの策定が必要だと考えました。』
世の中は変化の連続です。人の一生も同じですが、現実を直視して、いかにより良い道を歩むか、選択の連続だと思います。選択を誤らないための横浜市の道標(みちしるべ)、それが財政ビジョンでもあると思います。その意味で、
(2)財政ビジョンは、人口減少という将来見通しに強いられて策定するのではなく、横浜市のより良い未来を主体的に選択していくために策定するものだと考えるが市長の見解を伺う。
《市長答弁》『本市の財政は、今から手を打たなければ、遠くない将来に危機的な状況になると認識しています。従って、今、軌道修正すれば、持続的な発展につなげることができるタイミングと考えており、財政ビジョンを含む「3つの市政方針」を進めることで、横浜市のより良い未来を選んでいくことになるものと考えています。』
ビジョンを作るといっても、絵に描いた餅ではいけません。これからの横浜市政の「あり方」を真剣に考え、現状維持バイアスを克服し、しっかりと実行していかなくてはいけません。財政ビジョンに基づく財政運営で、具体的に問題が生じるのは、将来アクションとして記載している取組を、現実に実行するときに現れます。おそらく、これまで通りの行政運営、住民サービスを続けるだけだと、市民の負担が増え、サービスが減っていくため、財政ビジョンが大事だとわかっていても、この先の現実的な事象、政策変更などが表面化した時、総論賛成・各論反対となることが想定されます。そこで、
(3)実行にあたって総論賛成・各論反対が想定される財政ビジョンを策定する覚悟について市長に伺う。
《市長答弁》『本市として初めて経験する人口減少を迎えた今、中長期的な発展に向けた市政運営の道筋をお示しし、実行することこそが、市政を預かる私の責務であると考えています。策定から具体的なアクションの実行に当たりましては、市民の皆様に納得をいただけるよう、十分な説明を行う必要があると考えています。市民の皆様の御理解を得られるよう、全庁一丸となって力を尽くします。』
新型コロナウイルス感染症やウクライナ危機もそうですが、環境は刻々と変化します。ビジョンを作ったところで、すべてが思い通りに行くわけでもないですし、ビジョンに合わせて結果を合わせていくのもおかしな話です。いかに環境の変化に対応するかが問われてきます。そこで、(4)今後の財政運営に向けて、予期せぬ変化に対して財政ビジョンはどう対応するのか市長に伺う。
《市長答弁》『財政ビジョンは、長期的な目標に対して、中期計画の期間をベースとし、目標設定・実行・振り返り・改善のプロセスを回すことにより、状況変化に対応する政策的な裁量と、長期での財政規律を両立させることとしています。様々な政策課題に臨機応変に対応すると同時に、中長期のベンチマークの達成への道筋もしっかりとお示ししながら、持続的な財政運営を進めてまいります。』
財政ビジョンを作ることには、私は賛成ですが、目標も計画も、ある意味でつくるのは簡単かと私は思います。問題は、いかに「実行」して、「結果」に結びつけるかです。そのためにも、財政ビジョンの原案が示された今、現時点できっちりやっておくべきことは、ビジョンを機能させるための「仕組み」をしっかりと作ることだと考えます。そこで、(5)財政ビジョンを機能させるための仕組みづくりが必要と考えるが市長の見解を伺う。
《市長答弁》『財政ビジョンに基づく財政運営を進め、横浜市を持続的に発展させていくためには、改革を進める基盤を築くことが重要だと思います。そのため、財政ビジョンを踏まえた行政運営における基本的な考え方や取組の方向性などを整えていくとともに、財政ビジョンの目標・取組について、振り返りと改善のプロセスを確立してまいります。また、区局長を始めとした職員の意識改革にも取り組んでいきます。』
今日は「仕組み」についてしっかりと議論したいと思います。財政ビジョンの成否に関わる最重要課題の一つは、事業評価や人事評価といった「評価の基準の見直し」をどうするか、市役所がビジョンを前に、自分自身が変われるかどうかということだと思います。そしてもう一つは、「信頼の醸成」です。信頼を得る最も近い道は、「率先垂範」、まず自分が範を示すことです。 そこで、(6)財政ビジョンを進める上で、市民向けの政策のあり方を変えていくと同時に、市役所が変わっていくことが重要と考えるが、市長の見解を伺う。
《市長答弁》『財政ビジョンに基づき、厳しい将来に立ち向かって、明るい未来を切り拓いていくためには、「創造・転換」を理念とする歳出改革を始めとした新たな取組にチャレンジしていく必要があります。そのためにも、市役所・市の職員が財政ビジョンを自分ごととして捉え、率先して行動し、その姿を市民の皆様にお示しする、それが、改革の第一歩であると考えています。』