横浜市議会基本条例第13条第1号に基づき、「横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョンについて」議決されました。
「横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン」は、今後、人口減少や高齢化の進展等により財政状況がより一層厳しさを増すことが見込まれています。そのような状況の中でも、現役世代はもとより、子どもたちや将来市民に豊かな未来をつなぐため、“財政を土台”に、持続可能な市政が進められるよう、中長期の財政方針としてが策定されました。
「財政ビジョン」は、4つの観点から、将来にわたる安定した市政運営の「土台」となる持続的な財政を実現するため、中長期の財政方針として策定。(横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン)
1.【現在及び将来の横浜市民への責任】 横浜市政は、いついかなるときも、市民の皆様のいまを支え、未来をつなぐためにあります。そうした中で、現在の市民の皆様に対して、将来にわたって安心して生活の基点を置いていただけるよう、不確実性の高まる中でも可能な限り将来を見通し、持続可能な横浜市の姿を示していくことは、横浜市政に求められる責任の一つです。また、活力ある横浜市を今後も持続的に発展させていくことが、将来の横浜市民に対する責任でもあります。そのため、現在及び将来の横浜市民との間における市政運営上のリスク・コミュニケーションとして、その土台となる財政運営の明確なビジョンの策定が必要です。
2.【市政運営の前提条件の転換】 〔横浜市の構造変化〕横浜市では、今後、長期的に総人口が減少するとともに、人口構成についても、これまで大きな割合を占めてきた生産年齢人口が減少し、65歳以上の高齢者の割合が高くなっていくことが予測されています。これに伴い、市税収入の減少と社会保障経費の増加が生じ、毎年度の財政収支の不足が拡大していくことが見込まれています。また、これまで多くの財源を投入してきた市内の公共施設については、新規整備から保全更新のフェーズに移り、このために多くの経費が必要となってきます。このような構造的な課題を抱える中で、増加する人口と市税収入を前提としてきたこれまでの市政運営を継続することが難しくなっています。これからは高齢者や、所得が十分でない子育て世帯など特に助けを必要とする市民の皆様や、健康で文化的な市民の日常を支える社会インフラの状況に十分に目を配りながら、限られた財源の中で施策をより選択し(選択と集中)、同時に、可能な限り効果を高めて実施していく必要があります。〔外部環境の変化・危機への対応〕一方で、近年では地震や台風などの自然災害が増加するとともに、新型コロナウイルス感染症のような新たな脅威が出現しており、こうした大規模災害等は、横浜市のような大都市には特に大きな被害をもたらす傾向があります。国際情勢や経済環境の大きな変動も含め、市民生活を脅かす危機的な状況が決して珍しくなくなっている中で、市には、市民に最も近い基礎自治体として機動的・柔軟に対応することが求められており、こうした事態を十分に想定した財政運営が必要です。このように、多くの人口を擁する大都市という、これまで横浜市が強みとしてきた特色が、今後は大きなリスクに転換しかねない状況にあり、こうした市政運営の前提条件の転換を見据えた財政運営のビジョンを策定する必要があります。
3.【3つのリスクへの中長期的な対応】 以上のような市政運営の前提条件の転換を改めて整理すれば、人口動態の変化というベースラインリスクと、大規模災害や国際情勢、経済環境の大きな変動等のテールリスクという2つのリスクと言い換えることができます。加えて、地球温暖化による気候変動リスクは、その影響の程度が定かではないものの、中長期的な視点に立てば、市政運営の前提を変えうるリスクとして認識する必要があります。
こうした3つのリスクは、中長期的なスパンで表面化し、かつ、影響が多大なものであることから、その対応にあたっても短期的な取組だけでは不十分です。想定される未来を見据え、現在から一定の規律をもってリスクの顕在化に備えた準備・対応を進めていく必要があり、そのためにも財政運営上、一貫したビジョンが必要です。
4.「特別自治市」を見据えたより高度な自立性・自律性の確保 現在、横浜市は、市の規模と能力に見合う権限と財源を持つことにより、より充実した行政サービスを提供することを目的に、「特別自治市」構想を推進しています。市政運営においてより広範な権限と責任を持つということは、市政の土台である財政運営においても、より高度な自立性・自律性が求められることになります。「特別自治市」としての持続可能性を担保するためにも、将来の財政運営について、責任あるビジョンを持つことが必要です。