全世代型社会保障を踏まえ「創造的福祉社会」の構築へ

「人々のつながりと支え合いを幾重にも創り上げ、全ての人の尊厳を守るとともに、それぞれの自己実現に最適な環境を提供できる社会」である「創造的福祉社会」の構築をめざす。2040年過ぎに高齢者人口がピークに達して生産年齢人口が激減すると指摘されています。公明党は、社会保障を中心に日本がめざすべき将来像を示した「2040ビジョン」の中間取りまとめを公表しています。

1964年(昭和39年)に結成された公明党は、「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義=中道主義」の理念に立脚し、「大衆福祉」を高らかに掲げて出発しました。その大衆福祉とは、狭義の福祉論とは異なり、全ての人々の幸福を実現するための普遍主義的な社会改革を志向するものでした。結成大会前年に公明政治連盟(党の前身)の提唱で教科書の無償配布が実現したのをはじめ、児童手当の創設、年金の抜本改革、がんや認知症に関する基本法制の確立など、わが党は60年余にわたって社会保障、子育て支援と教育の改革をリードしてきました。近年、国政の大きな柱となった全世代型社会保障とは、まさにわが党の主張が政治の主流になった証しであると言えます。

日本は少子高齢化と人口減少により国の存立が揺るがされかねない深刻な局面に入っています。2040年過ぎに高齢者人口はピークに達し、生産年齢人口(15~64歳)が大幅に激減します。一方、地域におけるつながりの衰退は孤独・孤立の問題を深刻化させ、国民の幸福度を押し下げています。国連の「世界幸福度報告」(2024年版)によると、人々のつながりの豊かさを示す社会関係資本の指標とされる「社会的支援」と「寛容さ」において、日本はそれぞれ46位、125位と低迷しており、その改善が課題になっています。40年へ向けて少子化の流れを抑制しつつ、互いの支え合いを基盤にした新しい社会の構築へどのように踏み出すか、これから先はまさに「正念場の15年」となります。

この重要な時期において、公明党は大衆福祉の原点を再確認するとともに、これまで築き上げてきた全世代型社会保障を基盤として、新たな「創造的福祉社会」の構築に挑みます。創造的福祉社会とは、少子高齢化、人口減少の時代の諸課題に対処する制度改革だけではなく、「人々のつながりと支え合いを幾重にも創り上げ、全ての人の尊厳を守るとともに、それぞれの自己実現に最適な環境を提供できる社会」です。

創造的福祉社会をめざす個別具体的な制度の構築に際しては、医療や介護、福祉、教育など人間が生きていく上で不可欠な公的サービスに関して、所得や資産の多寡にかかわらず、誰もが平等にかつ必要な時にアクセスできる権利の保障をめざす、いわゆるベーシック・サービスの考え方を踏まえて取り組みます。公的サービスの給付に関しては所得制限などの受給条件を可能な限りなくし、その負担を能力に応じて社会全体で分かち合います。

こうした制度改革を通じて「弱者を助ける社会」から「弱者を生まない社会」への転換を促し、助けを必要とする人々の尊厳を守りつつ、「社会的分断」を防ぎます。全ての人に安心をもたらす社会保障改革で国民の連帯感を強化し、将来不安や「生きづらさ」の解消を図ります。

この考え方に立脚し、教育・子育て支援については、子どものいる世帯だけではなく社会全体でその負担を分かち合うことによって、全ての子どもたちへ平等に教育の機会を提供し、給付の有無による分断を防ぎます。子育て世帯の先行き不安を解消できれば、分厚い中間層の形成にもつながり社会の安定性と活力が増します。

加えて重視したいことは、われわれの暮らしや生命を支えているエッセンシャルワーカーへの支援、特に医療、介護、福祉、保育、教育に携わる人々への支援と負担の軽減とソーシャルワークの充実です。2020年からのコロナ禍では、エッセンシャルワーカーの献身的な働きで辛うじて医療や介護の崩壊を食い止めることができましたが、構造的な人手不足が深刻化するのはこれからです。また、地域の福祉課題が複合化・複雑化する中、こうした課題へ対応するソーシャルワークの重要性は高まっています。専門分野の「担い手」への支援を手厚くするとともに、人材確保が困難な人口縮減社会にあっては、地域のつながりを維持・再生するソーシャルワーク、地域住民の相互理解と互助こそが人間の尊厳を守り、各種制度を円滑に機能させる生命線となります。

正念場の15年では家族形態の変化を踏まえて単身世帯に力点を置いた社会改革に全力で取り組まなければなりません。高齢期の見守りだけではなく、青年期から中年期、高齢期、晩年期へと単身者が多様なつながりを形成し、生きがいを持って暮らせるよう、包摂的な地域社会の構築が強く求められています。さらに「住まい」の確保は人間の生存と尊厳にかかわる重要な基盤であることから、これを社会保障の柱の1つに位置付け、単身世帯にも充当できる居住支援政策を検討し、もが住居に困らない社会をめざします。

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