「トランポリン型」の社会保障の考え方

 財政学者の神野直彦東京大学名誉教授“危機の時代を生きる”

未来への責任をもち、持続可能な社会を築くために、「社会保障と税」は喫緊のテーマであるとして、これからの社会をどうつくるか――財政学者の神野直彦東京大学名誉教授が危機の時代を生きるで、財政民主主義を取り戻し「参加社会」へ転換する事が重要であるとインタビューで語られています。(聖教新聞7月4日)

今、経済の資産構造が変化しています。「有形資産(機械、土地など)」から「無形資産(情報、データなど)」を基盤にした経済へと急速に変わり、機械、鉄鋼、建設などに支えられた地域や産業が衰退し始めています。日本のように、社会保障やセーフティーネットを重視してきた国にとっては、こうした「形のない経済」への変化の中で、かつての公平性や包摂性をいかに取り戻すかが、課題となっています。

こうした変化に対応するため、ヨーロッパの国々は「積極的労働市場政策」を進めています。経済構造の変化によって仕事を失った人々が、新しい成長分野に移れるように、支援する仕組みです。例えば、鉄鋼業などで働いていた人が、ITなど新しい分野に転職できるように、再教育の制度が整えられています。
 その土台にあるのは、セーフティーネットではなく「トランポリン型」の社会保障の考え方です。たとえ失業や産業の転換で一度落ちたとしても、再び跳ね上がって前向きな未来へ飛び出していける力を与える。それが、社会の役割であると考えているのです。
 いずれにしても、大切なことは、私たち一人一人が時代状況を正しく認識し、「どのような社会を築いていくのか」「どのような福祉を整えていくのか」を主体的に考えることです。国民全員が社会をつくる「主人公」として、知恵を出し、未来を描く――社会の再生は、「一人」の心の変革から始まるのです。(同上)

神野先生は著書『財政と民主主義』において、コロナ禍に直面したから危機を迎えたわけではなく、“そもそも人類は「根源的」な危機の時代に生きている”という認識に立つことが重要と述べられています。 根源的危機の時代とは、人類が「絶滅」しかねない状況を迎えているということで、「肯定的解決」か「破局」か――私たちは、やり直しが利かなくなる重大な岐路に立っているとしています。

横浜市という生活現場から、経済の資産構造が変化。「有形資産(機械、土地など)」から「無形資産(情報、データなど)」を基盤にした経済へと急速に変わった事による地域の視点、福祉の視点等、今一度考えていきたいと思います。

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