児童虐待対策 「身体的虐待」について

令和元年度決算第一特別委員会・子ども青少年局審査。児童虐待対策について質疑。

令和元年度、横浜市の区役所と児童相談所における児童虐待の相談対応件数は、10,998件と、初めて1万件を超えました。そのうち、「身体的虐待」にあたるものは、全体の約22%にあたる2,455件でしたが、この中には、保護者が「しつけ」と称していわゆる「体罰」を行い、重篤な事態を招くものもあります。厚生労働省も、我が国においては、「しつけのために子どもを叩くことはやむを得ない」という意識が根強く存在し、そうした「しつけ」の名の下に行われる体罰が、徐々にエスカレートし、深刻な虐待を引き起こす事例も見受けられるとしています。

そうした中、令和元年6月に改正された児童福祉法等において、保護者から子どもに対する体罰が許されないものであることが法定化され、令和2年4月から施行されました。この法改正には、しつけと称した体罰が児童虐待につながっている実態を受け、我が党の児童虐待防止・社会的養護検討プロジェクトチームが、昨年2月に政府へ申し入れた緊急提言が反映され、成立したという経緯もあります。

(1)保護者からの体罰が子どもに及ぼす影響についてどのように考えるか(質問)。[答弁]心理的虐待、ネグレクトなどの虐待の中でも、身体的な虐待は、命に関わる重大な事態をもたらしかねない、特に危険度の高いものだと考えています。また、体罰等が繰り返されると、子どもの心身の成長・発達に様々な悪影響が生じる可能性があることも指摘をされているところでございます。子どもの権利を侵害する、決して許されない行為であると認識しています。

本市では法改正を受けて、令和2年5月に、ヨコハマeアンケートで「子どもに対するしつけと体罰に関するアンケート」を実施しました。その設問のうち、「しつけのために行う子どもへの体罰に対してどのように考えるか」という内容がありましたが、体罰に対する市民の皆さんの認識を量る、大変興味深いものです。

(2)ヨコハマeアンケートでみえる市民の体罰に対する認識について(質問)。[答弁]まず、選択肢として4つございましたが、回答として、「決してすべきでない」とお答えになった方が49.6%と約半数を占めています。一方で、体罰を「積極的に行った方がよい」とした方が0.7%、「必要に応じて行った方がよい」とした方(かた)が11.3%、「ほかに手段がないと思ったとき行うのは致し方ない」とお答えになった方が37.6%となり、合わせて約半数の49.6%でした。体罰を容認している方が半数いる、と取れる結果となり重く受け止めています。

「しつけのために子どもを叩くことはやむを得ない」という意識が根強く存在することが、伺い知れる結果であると思います。この世の中の意識を変えること、特に子育てにおける意識を変えていくには、地道な取組みが必要です。コロナ禍にあり、家庭環境が不安定になりやすい現状において、体罰によらない子育てを推進していくことは、その重みを増しているのではないかとも思われます。

(3)体罰禁止の意識醸成に向けた取組について(質問)。[答弁]体罰の禁止を推進すること自体は、保護者を罰するとか、追い込んだりということが目的ではなく、やはり子どもの権利を尊重し、社会全体で子どもを健やかに育てていく、これを支えていくことにほかならないと考えています。子育て支援の一環として実施している育児に関する学習会の実施や、講演会の開催等を通じて、体罰によらない子育ての仕方を、地道にではございますが、保護者にお伝えしています。今後も、あらゆる機会をとらえて、しつけに体罰を用いてはならないことを、広く市民に広報・啓発していきます。

約40年前に、世界で最初に体罰禁止を法定化したスウェーデンでも、長い時間をかけて、社会全体で認識を共有し、体罰によらない子育てを推進してきたと聞いています。同国では法改正に前後して、全国的なキャンペーンも行われたようですが、残念ながら我が国においては、コロナ禍の今、その気運の盛り上がりに欠けているように感じます。体罰は子どもの心と体を傷つけるだけでなく、体罰をした保護者にも苦しい思いを抱かせることになります。決して止めてはならない流れですので、横浜市においても不断の取組みを要望しました。

 

 

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