膵臓がん早期発見へ

公明党は2006年の「がん対策基本法」制定をリードするなど、がん対策に一貫して取り組んできました。医療体制を充実させ、がん患者全体の生存率は改善していますが、まだ厳しい状況にあるのが膵臓がんです。そうした中、広島県尾道市の取り組みが公明新聞で紹介されています。この事は、横浜市においても推進されています。尾道市では、地元医師会と中核病院が連携した早期発見の取り組みで、全国平均の2倍となる生存率向上を記録。「尾道方式」として全国に広がりつつあるとの事。(12月13日付公明新聞)以下紹介します。
 
 
■危険因子ある人を検査・追跡/瀬戸内のほぼ中央、広島県の東南部に位置する、人口約13万人の尾道市。この地で市医師会と中核病院が連携し、「膵癌早期診断プロジェクト」を始めたのは07年だった。具体的には、次のような仕組みだ。
 
 ①膵臓がんの家族歴や糖尿病など、危険因子を複数持つ人を対象に、地域のクリニックで腹部エコー(超音波)検査や血液検査などを行い、わずかでも疑わしい人がいれば精密検査ができる中核病院に紹介する。
②中核病院では、通院で行えるCTやMRI、EUS(超音波内視鏡)などを実施。さらに検査が必要とされたら、入院して精密検査を行う。
③膵臓がんと診断された場合は、適切な治療を行う。経過観察でも地元クリニックと中核病院で連携しながら追跡する。
 
■カギ握る信頼関係/地域ぐるみで膵臓がんを見逃さない取り組みを続けた結果、ステージ0、1での診断率が22・1%と、「尾道方式」開始前の4倍に増加。早期治療につながったことで最新の「5年生存率」は20・7%と、全国平均の2倍に伸びた。
もともと尾道市は、高齢者が住み慣れた場所で自分らしい暮らしを続けられる「地域包括ケアシステム」の先進地であり、地域での終末期医療に力を注いでいた。その結果、なすすべなく膵臓がん患者をみとる悔しさを、多くの開業医が共有していた。
 
「どうにか膵臓がんで亡くなる人を減らせないか」。当時の医師会長が相談したのが、地域の中核病院の一つであるJA尾道総合病院の医師で、大学医局時代に膵臓がんの研究をしていた花田敬士氏(現・副院長)だった。ここから「尾道方式」が編み出されていった。「尾道方式」に参加する平原クリニックの松本望副院長は「尾道市は古くからの開業医が多く、医師会が機能しており、横の連携がしやすい。また、中核病院の専門医とも距離が近く、信頼関係があるため安心して患者を紹介できる」と話す。
 
■全国50カ所に展開/「尾道方式」は、広島県が22年から県内全域に展開したほか、山梨県や横浜市などでも実施されており、全国50カ所以上に広がっているという。特に大都市部では、大きな病院が密集し、医師の入れ替わりも激しく、信頼関係を築くことは一筋縄ではいかない。それでも大阪市北部エリアでは13年から、6医師会と5中核施設の地域連携がスタートし、「5年生存率」が8・3%から18・4%へと向上している。早期発見は患者の命を救うだけではない。医療費も抑制できる。患者が社会復帰して元気に働けるようになることで、労働力の維持につながる。花田氏は「地域に今あるものを組み合わせるだけで多くの命を救うことができる。国が主導して、こうした早期発見の仕組みづくりを進めてほしい」と訴える。
 
■死因3位、年4万人の命奪う(23年統計)/膵臓がんの罹患者、死亡者数は年々増加している。統計では、年間で約4万6000人(21年)が罹患し、約4万人(23年)の命が奪われている。胃がんを抜いて、がん部位別死因の3位に浮上した。膵臓がんの予後の悪さは際立っており、「5年生存率」は男女とも約10%と、全てのがんの中で最も低い。これは早期発見が非常に難しく、見つかった時に手術不能な状態であることが多いためだ。膵臓がんの半数近くがステージ4で発見されている。理由として、痛みなど自覚症状がない上に、がんの進行が早いことが挙げられる。
 
■国の検診に含まれず/早期発見が重要なのに、膵臓がんは高い精度で簡易に検査できる方法が確立されておらず、国の5大がん検診(胃、肺、大腸、乳房、子宮頸部)には含まれていない。さらに治療薬の開発・実用化でも遅れていると指摘するのは、膵臓がん患者を支援するNPO法人「パンキャンジャパン」の眞島喜幸理事長だ。「ステージが進んだ状態でがんが見つかった患者にも希望を届ける必要がある。日本は治療薬の国際共同治験に参加できておらず、世界から取り残されている。早期発見の体制構築と治療薬の開発・実用化を車の両輪として進めてほしい」と語っていた。「尾道方式」を立ち上げたJA尾道総合病院の花田副院長。23年に厚生労働相表彰の「保健文化賞」を受賞している。
 
横浜市での対策/早期診断までの流れ

身近な医療機関での診察・検査ですい臓がんの危険因子があると診断された人を病院に紹介し、精密検査などの早期診断で治療につなげます。紹介先のプロジェクト実施病院は済生会横浜市東部病院(鶴見区)、横浜労災病院(港北区)、横浜医療センター(戸塚区)、横浜市立大学附属病院(金沢区)、横浜市立大学附属市民総合医療センター(南区)、昭和医科大学藤が丘病院(青葉区)、済生会横浜市南部病院(港南区)の7病院です。(令和7年4月時点)※プロジェクト実施病院の受診には紹介状が必要です。身近な医療機関で診察・検査を受けてください。

すい臓がんの危険因子/以下の項目に該当する人は、かかりつけ医など身近な医療機関に相談してください。

・すい臓がんにかかった血縁者がいる・糖尿病と診断された、増悪した人・慢性すい炎と診断された人・すいのう胞がある・大量飲酒習慣のある人・喫煙習慣のある人・BMI30以上の肥満、または過去に肥満であった人

詳しくは、横浜市「がん情報サイト」でも内容が確認できます。https://ganjoho.city.yokohama.lg.jp/knowledge/cancer/pancreas/

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