横浜市内においてもコロナ禍を経て、海外からの来訪者の姿を拝見する機会が増えています。日本は治安も良く、トイレ一つとっても清潔な場所が多いイメージもありますが、災害が多く発生する国でもあります。
日本を訪れる外国人旅行者は、災害に関する知識や情報等に乏しい場合もあり、大規模災害時には困難な状況に置かれることがあります。災害における多言語対応可能な施設の整備や生活習慣を考慮した備蓄等も課題となります。災害における滞在拠点の確保や連携強化という課題が必要にもなります。
また、少子高齢化に伴う人材不足や国際化等を背景として、日本では外国人労働者や留学生の受入れが拡大しており、日常生活の地域においても横浜市神奈川区でも外国籍のかたが約8600人生活をされています。地域における防災・減災への取り組みにおいても必要な視点です。横浜市では、横浜市国際交流協会と令和3年に協定を締結しています。市域において大規模災害発生などにより、市の災害対策本部が設置された場合等、市からの要請により横浜市国際交流協会が設置・運営を行います。
横浜市外国人災害時情報センターをパシフィコ横浜にある横浜国際交流協会(YOKE)の事務内に設置されます。センターの業務内容として・多言語による相談対応、情報提供・災害情報ウェブサイト等等での多言語での情報発信・避難所等への通訳ボランティアの派遣・災害発生に関する情報の翻訳等が行われます。
災害時における外国人旅行者の滞在拠点に関する自治体の取り組み及び課題について、国土交通省都市局「大規模地震発生時の帰宅困難者対策の推進に向けた官民連携支援方策に係る検討調査報告書」では、外国人観光客を想定した対策として、都市再生緊急整備地域及び1日当たりの乗降客数が 30 万人以上の主要駅周辺地域が所在する 54 市区のうち、多言語対応可能な一時滞在施設を整備(整備予定、検討中含む)している自治体の割合は14.3%となっている。また、宗教対応避難食33など外国人観光客の生活習慣を考慮した備蓄を整備(整備予定、検討中含む)している自治体の割合は、9.0%となっている。このような一時滞在施設の整備や宗教対応避難食の備蓄など外国人観光客向けの帰宅困難者対策を推進する上での課題については、同報告書によると、「知識・ノウハウ(多言語対応や生活習慣の把握など)が不足している」が 80.4%で最も多く、次いで「予算・人員が不足」(67.9%)、「関係者との合意や調整が困難」(67.0%)が続く一方、「対策の必要性を感じない」は 8.0%となっています。
直下型地震の熊本地震では、外国人住民以上に韓国、中国、タイ、アメリカ、フランスなど海外からの外国人旅行者が殺到したことにより、外国人避難者は一時的には 100 人を超えたが、その後、外国人旅行者は、交通情報を入手し、旅行会社でバスを手配して熊本から立ち去った。避難施設は、当初、指定外避難所扱いのために支援物資が配給されない懸念があったことから、事業団は、水、食料、おむつ、ハラール物資の提供をインターネットで呼びかけた。その結果、外国人支援団体や個人から多くの支援物資が集まった。また、外国人支援団体の協力により、避難施設が閉鎖されるまでほぼ毎日炊き出しが行われた。さらに、同会館は、自国民保護を求める各国の大使館や領事館からの問合せに対応する情報センターとなり、被災地の自治体外交や市民外交の拠点としての役割を果たしたとされます。
熊本市国際交流会館における外国人避難対応施設の開設についての対応は、外国人避難者から好意的な評価があり、また、有識者からも多言語に翻訳した資料の提示やハラール対応の弁当の手配など外国人避難者に対するきめ細かな対応を高く評価する声がある。さらに、避難施設での取組は、国内のみならず海外からの取材も多く、国際的にも高く評価されており、日本の信用と信頼を高める上で大きな役割を果たしたとされます。(災害時における外国人旅行者への対応に関する一考察、衆議院調査局増田充真氏)
いつ起こるかわからない災害について、多様な視点での準備・備え、取り組みが大切になります。