こども・子育て政策の課題1

こども・子育て政策の課題として“こども未来戦略”には以下のように示されています。

少子化の背景には、経済的な不安定さや出会いの機会の減少仕事と子育ての両立の難しさ家事・育児の負担が依然として女性に偏っている状況子育ての孤立感や負担感子育てや教育にかかる費用負担など、個々人の結婚、妊娠・出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている。とりわけ、こども・子育て政策を抜本的に強化していく上で我々が乗り越えるべき課題として次の3点が重要としています。

(1)若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない
●若い世代において、未婚化・晩婚化が進行しており、少子化の大きな要因の一つとなっていると指摘されている。
● 若い世代(18~34 歳の未婚者)の結婚意思については、依然として男女の8割以上が「いずれ結婚するつもり」と考えているものの、近年、「一生結婚するつもりはない」とする者の割合が増加傾向となっている。さらに、未婚者の希望するこども数については、夫婦の平均理想こども数(2.25 人)と比べて低水準であることに加えて、その減少傾向が続いており、直近では男性で 1.82 人、女性で 1.79 人と特に女性で大きく減少し、初めて2人を下回った。
●また、雇用形態別に有配偶率を見ると、男性の正規職員・従業員の場合の有配偶率は 25~29 歳で 27.4%、30~34 歳で 56.2%であるのに対し、非正規の職員・従業員の場合はそれぞれ 9.6%、20.0%となっており、さらに、非正規のうちパート・アルバイトでは、それぞれ 6.2%、13.0%にまで低下するなど、雇用形態の違いによる有配偶率の差が大きいことが分かる。また、年収別に見ると、いずれの年齢層でも一定水準までは年収が高い人ほど配偶者のいる割合が高い傾向にある。
●実際の若者の声としても、「自分がこれから先、こどもの生活を保障できるほどお金を稼げる自信がない」、「コロナ禍で突然仕事がなくなったり、解雇されたりすることへの不安が強くなった」などの将来の経済的な不安を吐露する意見が多く聞かれる。また、「結婚、子育てにメリットを感じない」との声や、「子育て世帯の大変な状況を目の当たりにして、結婚・出産に希望を感じない」との声もある。
●このように、若い世代が結婚やこどもを生み、育てることへの希望を持ちながらも、所得や雇用への不安等から、将来展望を描けない状況に陥っている。雇用の安定と質の向上を通じた雇用不安の払拭等に向け、若い世代の所得の持続的な向上につながる幅広い施策を展開するとともに、こども・子育て政策の強化を早急に実現し、これを持続していくことが必要である。あわせて、25~34 歳の男女が独身でいる理由について、「適当な相手に巡り合わない」とする割合が最も高くなっていることも踏まえた対応も必要である。さらに、幼少期から 10 代、20 代のうちに、こどもと触れ合う機会を多く持つことができるようにすることが重要である。

(2)子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある
●「自国はこどもを生み育てやすい国だと思うか」との問いに対し、スウェーデン、フランス及びドイツでは、いずれも約8割以上が「そう思う」と回答しているのに対し、日本では約6割が「そう思わない」と回答している。また、「日本の社会が結婚、妊娠、こども・子育てに温かい社会の実現に向かっているか」との問いに対し、約7割が「そう思わない」と回答している。
●子育て中の方々からも「電車内のベビーカー問題など、社会全体が子育て世帯に冷たい印象」、「子連れだと混雑しているところで肩身が狭い」などの声が挙がっており、公園で遊ぶこどもの声に苦情が寄せられるなど、社会全体の意識・雰囲気がこどもを生み、育てることをためらわせる状況にある。
●こどもや子育て世帯が安心・快適に日常生活を送ることができるようにするため、こどもや子育て世帯の目線に立ち、こどものための近隣地域の生活空間を形成する「こどもまんなかまちづくり」を加速化し、こどもの遊び場の確保や、親同士・地域住民との交流機会を生み出す空間の創出などの取組の更なる拡充を図っていく必要がある。
●また、全世帯の約3分の2が共働き世帯となる中で、未婚女性が考える「理想のライフコース」は、出産後も仕事を続ける「両立コース」が「再就職コース」を上回って最多となっているが、実際には女性の正規雇用における「L字カーブ」の存在など、理想とする両立コースを阻む障壁が存在している。
●女性(妻)の就業継続や第2子以降の出生割合は、夫の家事・育児時間が長いほど高い傾向にあるが、日本の夫の家事・育児関連時間は2時間程度と国際的に見ても低
水準である。また、こどもがいる共働きの夫婦について平日の帰宅時間は女性よりも男性の方が遅い傾向にあり、保育所の迎え、夕食、入浴、就寝などの育児負担が女性に集中する「ワンオペ」になっている傾向もある。
●実際の若者の声としても「女性にとって子育てとキャリアを両立することは困難」、「フルタイム共働きで子育ては無理があるかもしれない」といった声が挙がっている。
●一方で、男性について見ると、正社員の男性について育児休業制度を利用しなかった理由を尋ねた調査では、「収入を減らしたくなかった(39.9%)」が最も多かったが、「育児休業制度を取得しづらい職場の雰囲気、育児休業取得への職場の無理解(22.5%)」、「自分にしかできない仕事や担当している仕事があった(22.0%)」なども多く、制度はあっても利用しづらい職場環境が存在していることがうかがわれる。
● こうしたことから、こども・子育て政策を推進するに当たっては、今も根強い固定的な性別役割分担意識から脱却し、社会全体の意識の変革や働き方改革を正面に据えた総合的な対策をあらゆる政策手段を用いて実施していく必要がある。

 

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