東京電力福島第1原発事故で福島県から避難している子どもたちが、いじめに遭っている問題を受け、放射線に関する正しい知識を身に付ける放射線教育の重要性が改めて指摘されています。そこで、子どもたちの学習拠点として注目を集める福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」(同県三春町)を視察。
昨年7月にオープンしたコミュタン福島には、放射線などに関する「正確な情報を分かりやすく伝えることが大切」と、目には見えない放射線の特徴がつかめるよう、随所に工夫を凝らした展示が並びます。
例えば、放射線は自然界にもともと存在し、空気中を頻繁に飛び交っている。この様子を一目で確認できるよう、放射線の通り道に沿って、飛行機雲のような霧を発生させる装置「霧箱」が設置されています。
混同しやすい言葉の違いは、例えとイラストを用いて説明。放射性物質、放射能、放射線は「たき火」に例えると、火を起こす力を持った「まき」が放射性物質、「火」が放射能、近づくと熱く感じる「熱」が放射線に当たります。
ベクレル、グレイ、シーベルトという放射線に関する単位も、ボクシングを例に、パンチの「数」をベクレル、パンチの「威力」をグレイ、パンチによる身体への「ダメージ」をシーベルトと表現している。
また、原発事故から6年がたち、除染などで放射線量が低減している様子が、大画面の「放射線測定マップ」で確認できる。県内各地の現在の放射線量を表示し、事故直後や国内外の各都市とも比較可能。
例えば、3月22日午前8時現在では、第1原発から約40キロ離れた、いわき市平が1時間当たり0・046マイクロシーベルト、東京都新宿区が0・036マイクロシーベルト、福岡市が0・058マイクロシーベルトなどとなっています。
このほか、原子力に依存しない社会に向け、県が力を入れる再生可能エネルギーの取り組みの紹介や、世界で国立科学博物館(東京都台東区)とコミュタン福島の2カ所にしかない、360度の映像を体験できる全球型シアターがあります。
コミュタン福島の来館者は5万人を突破。県が交通費(貸し切りバスの経費)を補助していることもあり、県内小学5年生を中心に校外学習の場として積極的に利用されています。
原発事故により三春町へ移転してきた富岡町立富岡第一中学校では昨年11月、全生徒が総合的な学習の時間などを使い、コミュタン福島を見学。
ある生徒は、当初、除染で取り除いた土を袋に詰め込み、校庭に埋めることへの安全性に疑問を持っていたが、土の遮蔽効果を知り、納得したといいいます。また、富岡町内全域がいまだ避難区域のままですが、原発事故直後と比べ、「放射線量が思っていた以上に下がっていた」との感想も寄せられた(同町は4月1日、帰還困難区域を除き、避難指示が解除)。
同校の阿部洋己校長は「放射線や原発事故、その後の復興の歩みについて、生徒が理解する上で、コミュタン福島が大いに役立っている」と語ります。(公明新聞3・28付)
また、 “原発避難いじめ”の背景には十分な放射線教育が行われていない現状があるとして、公明党はその充実を訴えてきました。横浜市でも今年2月、公明党の質問を受け、17年度から環境創造センターと連携した教員研修を行う方針を示しています。