横浜市などの大都市は、高い行財政能力を有しているにもかかわらず、国の地方自 治制度においては、その能力を存分に発揮できる十分な制度的な位置付けがされていま せん。
アジアなどの諸外国が大都市を拠点として著しい発展を遂げており、我が国も激しい グローバルな競争を勝ち抜いていかなければならない中で、大都市の重要性や課題に着 目せず、府県を通じた全国画一的な中央集権的管理体制を温存し、今後もこのまま大都 市制度の問題解決を更に放置し続けたならば、この国の将来は立ち行かなくなる恐れが 十分にあります。 グローバルな都市間競争を勝ち抜いていくためにも、地方自治制度を抜本的に改革す るとともに、大都市の役割にふさわしい、現行指定都市制度に代わる新たな大都市制度 の早期創設が必要です。(横浜市 新たな大都市制度の創設の基本的考え方)
今年度の特別委員会の所属が、大都市行財政制度特別委員会の所属ですので、調査研究は基より、市民の皆様と考える機会を設けていく事も必要と考えています。
そもそも、歴史を振り返れば、横浜・大阪・名古屋・京都・兵庫の5大市は、府県からの独立を訴えて、戦前から「特別市制運動」を展開し、その結果、昭 和 22(1947)年の地方自治法制定により、「特別市制度」が創設されました。しか し、神奈川県など 5 府県の猛烈な反対に遭い、特別市制度は適用されずに、昭和 31 (1956)年に廃止され、その代わりに、抜本的改革までの暫定的な措置として、府 県制度を当面温存する形で創設された「指定都市制度」が 5 大市に適用されました。 横浜市では、制度成立後から、他都市とも連携しながら、歴代市長・議長が早期の制 度改革を国に訴えてきましたが、半世紀以上経った現在においても、抜本的な見直 しはされないままとなっています。
その半世紀の間に、全国的な都市化の進展とともに、指定要件の政策的な緩和も あり、指定都市の数は 19 市(平成 22 年 4 月現在)にまで増え、我が国総人口の約 2割が指定都市市民となっています。また、中核市・特例市制度の創設や府県から 市町村への権限移譲、市町村合併の進展、市町村間の広域行政の仕組みの整備、情 報通信技術の進歩などもあり、市町村に対する広域・補完・連絡調整を担ってきた とされる府県の役割も含め、地方自治の大きな枠組みが改めて問われるべき状況と なっています。
大都市には、国全体の発展をけん引する成長拠点としての役割が期待される一方 で、大都市への人口集中や大量に増加する高齢人口への対応、老朽化する都市イン フラの維持更新など、今後さらに多くの深刻な課題を抱えることが予想されます。 さらに、経済状況の悪化や雇用の不安定化による生活困難層の拡大などの懸念もあ ります。 しかし、そのような中にあっても、大都市が抱える様々な課題を効率的に解決し ていくとともに、国全体として活力をもって持続的に発展していく必要があります。
大都市が現在の地方自治制度(指定都市制度)よりも自立性の高い制度の下に置 かれた場合を想定し、政策展開の自由度の拡大により新たに創出される効果と、こ の新たに創出される効果によって誘発される間接的効果とを合わせた経済的効果は、 横浜市を例とした場合、4.3 兆円に達するという試算もあります。
こうした経済的効果は、本市ばかりでなく、周辺自治体にとっても雇用の創出や 経済の活性化として現れるなど、大きなメリットになると考えられます。