大都市では、今後、人口減少や少子高齢化への対応、老朽化する都市インフラの維持更新など、多くの深刻な課題を抱えています。その一方で、大都市には、海外の大都市との都市間競争に勝ち抜き、国全体の経済成長をけん引する役割も期待されています。こうした課題に対応し、大都市としての役割を果たすため、現在の指定都市制度を見直し、国が担うべき事務を除く全ての地方事務を大都市が一元的に担う制度です。
横浜市が目指し、議論を重ねているの大都市制度は、「横浜特別自治市」です。今年度の特別委員会の所属は、「大都市行財政制度特別委員会」の副委員長に就かせていただきます。
横浜市は国の経済をけん引する役割を果たしていく都市の一つですが、現行の指定都市制度では、大都市がその能力を十分に発揮できるような制度的位置付けがされていません。市民の暮らしを支え、さらに経済を活性化していくためには、大都市・横浜が持つ力を存分に発揮できる特別自治市制度が必要です。
横浜特別自治市制度の骨子として(大綱概要より)
(1) 特別自治市としての横浜市は、原則として、現在県が横浜市域において実施している事務及び横浜市が担っている事務の全部を処理する。
(2) 特別自治市としての横浜市は、市域内地方税の全てを賦課徴収する。
(3) 特別自治市としての横浜市は、神奈川県及び近接市町村等との水平的・対等な連携協力関係を維持・強化する。
(4) 特別自治市としての横浜市の内部の自治構造は、市-区の2層構造を基本とし、現行の行政区を単位に住民自治を制度的に強化する。
特別自治市内部の自治構造は、特別区ではなく、市域で一体的なまちづくりや地域間のバランス調整ができ、行政運営の効率性と住民自治を両立する行政区とする。
横浜市は、大都市地域における特別区の設置に関する法律(平成 24 年法律第 80 号)による特別区の設置は目指さないものとする。
横浜市の強みである都市の一体性を保ち、都市全体として力を高めていくためにも区長は公選とせずに、横浜市会大都市行財政制度特別委員会報告書(平成 24 年5月)における「選挙で選ばれた公選職である市会議員が、当該区民の代表として区政にかかわることができるよう、現行制度の下でも、できる限りの仕組みを構築する必要がある」という提言なども踏まえ、区民の代表が区政を民主的にチェックする仕組みを構築する。
また、地域特性や実情に応じて、行政をより住民に近づけるため、区政における住民の参画機会の仕組みを設置することや、地域の様々な団体や人々が連携して課題解決に取り組む場の拡充など新たな仕組みづくりを進める必要があります。
そもそも歴史を振り返ると、横浜・名古屋・京都・大阪・神戸の5大市では、大都市自治の拡充と大都市行政の能率的な遂行のため、府県からの独立を訴えて、戦前から「特別市制運動」を展開し、その結果、昭和 22 年の地方自治法制定により「特別市制度」が創設されました。 しかし、大都市がその区域から独立することによる空洞化を懸念した5府県(神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫)等の猛烈な反対に遭い、結局、特別市制度は適用されないまま、昭和 31 年に廃止されました。そして、その代わりに暫定的制度として「指定都市制度」が創設され、5大市に適用されることとなりました。
横浜市では、他都市とも連携しながら、歴代市長・議長が指定都市制度の改革を国に訴えてきましたが、半世紀以上経過した現在においても、抜本的な見直しはされていません。 平成 22 年5月、横浜市では、市会との議論を経て、「新たな大都市制度創設の基本的考え方」を策定し、新たな大都市制度である「特別自治市」の基本的枠組みを定めました。同時期に、指定都市市長会においても、横浜市の考え方と方向性を同じくする「特別自治市」構想を発表しています。
横浜市に相応しい都市の制度の在り方に向けて、今年度、注力して参ります。